Angie

突然炎のごとくのAngieのレビュー・感想・評価

突然炎のごとく(1961年製作の映画)
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私を捕まえて

『私を捕まえて』と言い、カトリーヌは家を飛び出して走り去る。それを追いかけるジム。ジムを追いかけるジュール。このシーンが何よりも美しく、何よりもカトリーヌを表している。

カトリーヌはとんでもない女性だ。だが、彼女が愛したセリフ、モットーのように、彼女はまっすぐ自由に生きた。彼女を燃やすのは熱い恋の炎。彼女を生かすのは男たち。恋愛こそ、愛こそ彼女の全てであり、極端に徹底していた。それは男たちから見れば怖いことなのかもしれないが、私にはどこかわかってしまうところもある。この、女の愛への執着心を、どうしてここまでトリュフォーは描けるのだろう。トリュフォーが怖い…

そんなカトリーヌに振り回された2人の男は性格や考え方が全く異なり、そこもまた面白い。遠くからでも彼女とともにいたい、やさしき臆病なジュール。自分の幸せや主張も持ちながらも、カトリーヌを愛してしまう大人なジム。ジムと「ゼロから再出発」できなかったのは、そんなジムの性格のせいかもしれない。ジムは自分自身で自制をしてまともに生きようとしていた。恋の炎に身をまかせることなどしなかった。自分と違うジムに惚れるカトリーヌだが、初めて自分が愛されないことによって余計に愛が募ってしまう。そしてそれを燃え果たすために、車を走らすのだ。

カメラワーク、セリフ、全て詩的で美しい。前半の3人のシーンで伝わってくるみずみずしい青春の画。自転車を走らす3人の疾走感と若々しさ。戦争を挟み、山小屋のシーンになってから漂い始める不吉な空気感。その中でも垣間見える美しい山々の景色。遠くから景色を撮ったり、当時の記録映像を混ぜたりしているところにも注目。

カトリーヌは極端に生きていき、はたから見れば愚かで狂っている生き方なのだが、なんとなく、私はそれが人間らしくもあり素敵にも感じてしまう。それは堂々と燃え上がることのできない私が持ってしまう憧れなのか、それともジャンヌモローの美しさがゆえにか。
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