湯っ子

怪異談 生きてゐる小平次の湯っ子のレビュー・感想・評価

怪異談 生きてゐる小平次(1982年製作の映画)
4.0
幼なじみの3人、今ではおちかと太九郎は夫婦、小平次はおちかに横恋慕。
小平次はおちかに「俺の女房になってくれ」と何度も言いにくるが、おちかはつれない。小平次の気持ちを弄ぶよう。でもどこか嬉しそう。
太九郎はうまくいかないことがあればおちかに当たり散らすDV男、おちかは何度も殴られ蹴られ首を絞められるたびに別れを口にする割に、太九郎から離れない。

小平次が死んでも死んでも生き返る後半のおどろおどろしい雰囲気も楽しんだけど、前半の小平次が生きてる時の、おちかさんとの逢瀬とも言えないくらいわずかな時間にゾクゾクした。小平次とおちかの間には、必ず暖簾など間に仕切りがあって、小平次は目を合わせずに熱烈な求愛をし、おちかも小平次の方は見ずにそれに応える。なんて素敵にジャパネスク!
演出も面白い。歌舞伎のことはよくわからないけど、たぶんその要素もあるんだろうな。お囃子や三味線や台詞回しが気持ちよくて、ああ、これが快いのはやはりDNAなんだろうか…と思ったりする。

短尺なので、最後まで観てからもう一度再生してみたが、おちかさんは小平次といる時の方が表情が明るいような気がするし、心を許しているように見える。
だからこそ、あれだけ太九郎に暴力を振るわれても別れずにいるのが不思議。威張ってるだけで本当は弱くて意外と御しやすい男だったりするからか、殴られるのは愛されてるからって思ってるからか。

おちかさんの心の中は最後までミステリーだった。
湯っ子

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