えんさん

ブルゴーニュで会いましょうのえんさんのレビュー・感想・評価

1.5
フランスで名高いワイン評論家のチャーリー。彼は20歳で実家を出てから、この道に突き進み、今では彼のつけるレイティングが業界では重要視されるほどだった。そんな彼のもとに、実家のワイナリーが倒産の危機に陥っていることの知らせが入る。急遽帰郷したチャーリーの目の前に広がっていたのは、子どもの頃に大好きな祖父から教わった伝統のワイン畑。しかし、品質が保たれていない管理方法で、倉庫には味の落ちたワインの在庫の山が積み上がっていた。チャーリーは疎遠になっていた頑固な父親と衝突しながらも、家族を守るため最高のワインを作ろうとする。。フランス・ブルゴーニュ地方で撮影し、ワイナリーを営む家族の再生を綴った人間ドラマ。監督は「ラスト・アサシン」(日本未公開)のジェローム・ル・メール。

実家の家業に見切りをつけて都会に出てきたものの、その家業の危機的な状況から嫌々ながらも故郷に戻り、実の家業を通じて、人生の再出発を図る。。日本でもよく見られるような形の作品なのですが、本作の見どころは何といってもワイン畑やワイナリーの美しいまでの田舎の風景美。こんな穏やかな風景の中で人生の再出発が図れるのなら、人生も悪くないのかも、、という気になってくるくらいです。それにフランス人がワインを愛でるというのは、日本人が日本酒を愛でるという姿と比べ物にならないくらいにカッコいい(笑)。日本だったら、田舎に高級車で踏み入れるのは趣味の悪いおっさんくらいしかいないけど、フランスだったら、なぜかそんな似合わないような組み合わせも合ってしまう。フランス映画にワインというだけで、日本人から見ると、だいぶ得をしているように思えます。

それにもう1つの見どころは、ワイン評論家としての一流なチャーリーが、ワイン生産者として一流になれるか、というところ。例えれば、僕は映画が好きな感想文家(批評家ではないです、、)ですが、僕がちゃんとした映画を作れるか、というのと同じスキームなのです。本作を見ても分かるのですが、やはりワインという同じものを取り扱っていて、共通な知識を持っているものの、評論家と生産者というのは全く違う仕事なんだということが分かります。評論は評論として分析する技術がいるし、生産は生産でワインの味だけでなく、一流の農業生産者としてのノウハウは欠かせない。同じようで全く違う仕事なんだということがよく分かります。ただ、本作のイマイチなのは、ワイン生産者として素人なチャーリーが、失敗を重ねながら成長するというよりは、失敗をうまく回避していくような行動しか起こさないところ。結果的にはメデタシメデタシで終わるのですが、彼が失敗しなかったのはとってもご都合主義としか思えない偶然の重なり合いくらいしか見えない。ワイン評論の知識が生きている部分もあるのですが、生産者としての彼があまり成長しない姿に少し共感できないのです。作品のテンポが良すぎるのもどうかと、、なんか父子の衝突もありながらも、あっさりとお互い納得してしまって、ドラマの食いつきがイマイチ足りないのです。作品の雰囲気はいいのですが、全体的に残念感が満載な気がする作品でした。