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地獄の警備員のshxtpieのレビュー・感想・評価

地獄の警備員(1992年製作の映画)
3.0
遺恨を残した『スウィートホーム』から3年後の、黒沢清長編第4作目。黒沢のフィルモグラフィをたどってわかったのは、この映画が彼の二度目のデビュー作だというふうに感じられる、ということ。シンメトリー、ロングショット(久野真紀子が地下の資料室に閉じ込められたシーンやラストカットが印象的)、長回し、ベールのようなビニールのカーテン……。カメラの置きかたや撮りかたもふくめて、どこまでも黒沢的。ぎゃくに、この時点でこれほどまでに完成されていたのか、と驚かせられる。エドワード・ヤン的な構図、ときたまロベール・ブレッソン的なカット、つまり、黒沢が言うところの「ヨーロピアン」な表現で、どこまでもアメリカ的なスラッシャーやゴアを表現しているあたりが、なんとも黒沢らしい。また、ただひたすらに暴力をふるう装置と化した松重豊は、じつにおそろしい。それと、俳優たちが叫んだりせずに、恐怖や暴力に面して、声を失ってしまう演出がすばらしい。それと、殴打音のドライさに打ちのめされた。ほんとうによくできたホラー、サイコスリラーだと思う。由良宜子が最高で、死なないのかな〜と思っていたら、あっけなく死んでしまった。ラストカットに洞口依子も出てきて大満足。黒沢清は、もう一度ここから始まった。ここから『クリーピー』までは、一直線の道のりだ。
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