ろく

選挙のろくのレビュー・感想・評価

選挙(2006年製作の映画)
3.8
もう主役の山内和彦の作り笑いがとれないのよ。いやこれが一番怖い。誰にもいつも笑っているけど目は笑ってないんだ。これはホラーですよ。

ドキュメンタリーなんだけど追っかけるのは自民党の落下傘候補。川崎市の市議会補欠選挙を追っていく。うん、候補の山内自身が「なんで立候補したのかよくわからない」のよ。それでも立候補しなければいけない。でもそこにあるのは「選挙で勝つ」ことだけ。市民のため?みんなのため?そんなことは全くないのよ。

また彼のサポートも川崎をよくしようなんてことよりもただ「選挙で勝つ」ことだけしか考えてない。うん、体育会的で、頭の下げ方、握手の仕方、演説の仕方。もうさ、こんなコントな選挙ばかりやっているんだもん。日本って……

それは候補の山内だってわかっている。映画の中でも語っているくらいだもん。でも歯車は回っている。彼に出来ることは大声で「頑張ります」「よろしくお願いします!」こればかり。これが日本の現実なんだろうな。

同じ選挙の映画として「なぜ君は総理大臣になれないか」や「香川一区」があるけれど、大きな違いは「日本をよくしよう」なんてことを欠片も考えてないってことなんだ。もう自分たちの団体=自民党を守るだけでしかないの。そのための選挙。うすら寒い。

「選挙だから妻と呼ばないで家内と呼びなさい」「奥さんが仕事なんかしちゃダメだ。仕事は辞めるように」周りの声はとんでもなくマチズム。ああ、自民党とマチズムは同根だと思うとなにかすっきりしたのよ。マチズムはある種の年齢を重ねた人にはリアルなものであるんだよ。そしてそこには人権思想なんかあるわけもないんだよ。

ちょっと怖い話。実はうちのおじきが町会議員選挙に立候補して落選したんだけど、なぜかなって聞いたときおじきが言った言葉がほんといや。

「敵の党は各家庭の前に車を止めて投票所まで送ったんだよ。あと出るとき握手して1000円渡していたんだ」それを聞いて目が点。でもその後言ったおじきの言葉が……「おれもやるべきだったなぁ。1000円だろ」田舎はこんなことが起きていたんです。いや都会だって起きていたんじゃないの。これで民主主義なんてちゃんちゃらおかしいんですよ。
ろく

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