和桜

コンタクトの和桜のレビュー・感想・評価

コンタクト(1997年製作の映画)
3.7
証明も説明も出来ない事柄を、それを信じない人たちにどう伝えればいいのか?
科学や合理性を持った人間が上に立ち、証明できない事柄を切り捨てていく人達が世界を引っ張っていく限り、宇宙外生命体との接触はあり得ないのかもしれない。
宇宙人とのコンタクトは、政治や科学だけでなく宗教の問題へと発展していく現実を示したSF映画の名作。

この映画の怖いところって、舞台が日本であったとしても「宗教よくわかりません」じゃすまないという点。宇宙人の存在が明らかとなった時点で、問題は世界規模になる。キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教で世界人口の7割を占める世界において、政治的な問題と同じくらい宗教的な問題が激化する。

最近の日本のSFは政治を絡めるのが流行だけど、宗教については直接語ることを避けている節がある。日本政府のみが知っている極秘案件で、話が世界規模になる前に終わってしまう。世界に知れ渡っても、何故かずっと日本の話をしてるみたいな。これは日本人に宗教や神を信じる人々を理解させるのが如何に難しいか、そもそもそういった問題を観客側が求めていないという難問のせいかもしれない。だけどだからこそ、その問題に正面からぶつかって「シンゴジラ」くらいのブームになる意欲作を誰か作らないだろうか!こういう映画こそ、日本みたいに信仰が曖昧な国の視点で撮られるべきだと思う。

ドラマ部分としては「SFは恋愛や人間を描くのが下手すぎ問題」が叫ばれてた時代だけあって、ちょっとテンプレな人間模様。だけど、それ以上に宗教、政治、科学といった議論が面白くて見入ってしまう。
宇宙人からのテレビ映像や「スペースが広すぎる」「詩人を乗せるべきだった」など、センスやユーモア溢れる表現も地味に好き。
和桜

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