2021年鑑賞37本目。
現代の介護問題にも通じるテーマを持つ「家族」の物語。ラストはスカッとする。
日本が太平洋戦争に突入する年に公開された作品なんですけど。いかにもお金持ちっぽい名家の戸田家の当主が亡くなったことから、息子、娘の家を転々とすることになる母と三女の節子。
長男の家や長女の家で鬱陶しがられる母と節子の二人の姿を見てるのは辛かったー。
これまで鑑賞してきた小津監督作品は結構会話の面白さがあったので、そんなに暗い印象はなかったけど、これは見てて心苦しい感じになりましたねえ。
ただね、肩身の狭い思いをする母と節子の二人をかわいそうだと思う気持ちと同時に、長男や長女の気持ちもちょっとわかるんですよね。結婚とかして離れ離れになった家族同士って、たまに会うくらいの関係だからトラブルにならないわけで、それが急に一緒に住むことになったらそりゃ嫌だろうなあと。自分のこととして考えてみると長男や長女と同じ感じで接してしまうんじゃないかなあと思ったわけです。
かといって、この物語は救いがないわけではなくて、戸田家の次男、昌二郎がめっちゃいい味出してるんですよ。冒頭、戸田家が揃って家族写真を撮るところから物語が始まるんですけど、みんな準備完了して庭に集まってるのに、次男だけがいない。節子が部屋まで呼びにいくと、全然準備してないわけです。結構だらしない系のキャラなんかな、と思っていたんですが、物語ラストでのスカッとする活躍が良かった。ラストの昌二郎の、兄妹に対する厳しい言葉は観客に向けたものでもあるんじゃないだろうか、とも思えるくらい心に突き刺さります。
そしてこの冒頭のシークエンスも本当に上手い。さすが小津監督って感じです。先ほど述べたように、家族写真を撮るためにみんなが準備して集まるところから始まるんですが、このシークエンスの中で自然な運びで家族の関係性とか人柄を表現して見せるという。恐るべし。
1941年の作品ということで、かなり古いので音声の中に雑音が結構混じってまして、聞き取れないセリフもあるのがちょっと残念なポイントですが、断片的でも物語を理解することはできるので、おすすめです!
2021/3/21鑑賞