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ジャズ・シンガーの皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

ジャズ・シンガー(1980年製作の映画)
3.8
最初のトーキー映画、という映画史的価値以外にはなんの魅力もない『ジャズ・シンガー』27年版のリメイク、ってどう考えても企画自体が間違ってるのに、こんな代物を良作にしてしまうリチャード・フライシャー、ほんと恐るべき職人芸と言うほかない。
まあ身も蓋もないことを言ってしまえば、なんたってニール・ダイアモンドの歌が良いので、それだけでもってる節はある。
ローレンス・オリヴィエの親父が27年版のただ頑固なだけの老害よりはるかに良いキャラクターになってる。LAに行ってくるっていう主人公に、「絶対ダメだ、お前は帰ってこなくなる!」、っと声を荒げた後、「どうしても行くというなら……」で間をおいて「気をつけてお行き」と優しく言い添える。こんなの号泣するに決まってんだから……
廊下で妻と決裂して、廊下で親父と和解する、とかささやかなロケーションの使い方も上手い。
レコーディングスタジオに呼び付けられて、どうしようもないアレンジで歌われてるのを見て、バラードで歌わせてくれ、と頼むと、思いのほかすんなりやらせてくれる→素晴らしく歌い上げてからの、悪くないね、不採用で落とすのとか、エモーションのコントロールがいちいち巧み。多分コーエン兄弟の『インサイド・ルーウェイン・デーヴィス』はこのシーンパクってる。