継

アラバマ物語の継のレビュー・感想・評価

アラバマ物語(1962年製作の映画)
4.5
幼い頃遊んだオモチャ箱を開け、幼少期を回想して幕を開ける物語。
人種差別、貧困、DV、陪審員制度、障がい者...
映画は、'30年代のアラバマの街を舞台に不条理と偏見が渦巻く社会の現実を少女・スカウトの視点で映す。

スカウトはお転婆で怖いもの知らず。
言動は無邪気で時にハラハラさせられるけれど、
本作はそんな彼女が投げ掛ける疑問を真正面から受け止める父親アティカスの姿を丁寧に描き、子供への接し方はもとより、人としてどうあるべきかまで諭すように説くようにとにかく丁寧に物語を運ぶ。

'60年に書かれた有名な小説の映画化。
原題『To Kill a Mocking bird』.
原作者ハーパー・リーは「冷血」の作者トルーマン・カポーティと4歳の時から知り合い。 彼の伝記映画『カポーティ』で彼女を演じたのはキャサリン・キーナー。
カポーティは本作にディルとして登場。隣人ブーを演じ、のちに有名となる役者も含め、多くのサイドストーリーが本作には存在。

差別意識の根強い時代の更に南部のアラバマで、all白人の陪審員相手のハナから勝ち目なんて無い法廷で、そんな事とは別に、
弁護士で何より父親である自分が正しい事をしないで何で子供たちに顔向け出来る?って立ち向かって、当然のように負けるんだけど、子供たちはそれでも毅然と退廷する父親の背中から何かを感じとって学ぶ。

「アメリカ人が選ぶヒーロー」という企画でスーパーマンやロッキー他、並み居るヒーローを抑えてNo. 1に選ばれたこともあるアティカス・フィンチ。
現在にもまんま通じるリアルな環境で、それでも諦めず目を背けず貫こうとしたからの支持?現実には到底不可能な正義。

原題のmockingbirdについて、アティカスは劇中「殺してはいけないよ、あの鳥は他の鳥の真似をするだけの害のない鳥だから」と言う。
スカウトはこれを思い出して(ブーを人前に晒すのは)「mockingbirdを殺す事と同じだね」と言う。

和名をマネシツグミというこの鳥は、主に北米で繁殖し巣を守ろうとする習性が強いらしい。トランプの票田・南部テキサス州の州鳥ってのも踏まえて保守的な白人の象徴に思えるのは何とも皮肉。


ハイスクールの教材になる位、広く読まれている原作。
エミネムが “mockingbird” という曲を書いている。己の娘と養子縁組して引き取った元妻の二人の連れ子を養育する彼が、彼女達へ向けて作ったもの。
エミネム 「mockingbird」PV ↓
https://youtu.be/S9bCLPwzSC0
この曲のmockingbirdとは、話し掛けるとモノマネし返すぬいぐるみの玩具に過ぎないしハッキリした言及はないんだけれど、最後のヴァースのアウトロに1度しか出てこない、リリックにおいて中心的な意味を成さないこのワードを敢えてタイトルとしたのは、
父親として不甲斐ない己の姿を、同じく片親で子供を育てたアティカスに重ねた自虐に見て取れる。
表層に載せたのは娘たちへの思い、だけどその裏に込めたのは
“黒人を庇(かば)うな!” とディスられた弁護士に
“黒人のマネしやがって“ と嘲笑される白人ラッパーの己を、言葉を武器とする意味で同士と仰ぎ、信念を曲げず戦った姿勢に捧げたリスペクトだったように聴こえる。