tjZero

太陽はひとりぼっちのtjZeroのレビュー・感想・評価

太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)
4.1
ミケランジェロ・アントニオーニという監督さんは著名であるし、評価も高いので気になってはいたんですが、なんとなく敷居が高そうで敬遠していました。

それというのも、彼の作品を評した文章には必ずといっていいほど、”愛の不毛”という表現が出てくるんですよ。まるでキャッチフレーズのごとく。

なので、アントニオーニ=愛の不毛、と刷り込まれてしまい、「オレにはたぶん分かんないや」と食わず嫌いをしておりました。

本作も録画したのにも関わらず、長らくHDDの中に埋もれていたんですが、さすがにそろそろ観ないと…と引っ張り出してきました。アントニオーニ作とのファースト・コンタクトであります。

婚約者と別れたばかりのヴィットリア(モニカ・ヴィッティ)と、株の大暴落で顧客に損害を与えた仲買人のピエロ(アラン・ドロン)がダラダラとつきあう、というお話。

ほとんどストーリーは無く、前半は「なんじゃこりゃ」と呆然としていたのですが、中盤以降作品のトーンにこちらの心身が慣れてくるとグングンと面白くなっていきました。

観ていてすごく心地いい、というか、自由な感じがする。
お話自体は、空虚な心を抱えた男女が互いを持て余しながら向き合う…という寂しげなものなんですが、その捉え方が斬新というか、自分の心すら”他人”扱いしているような、突き放した解放感があります。

己の心ですら他人事のようで持て余しちゃうんだから、性が別のパートナーの事なんて理解できるはずがないじゃん…っていう諦めがいっそ前向きに映る。余計なものから解き放たれた感じがする。清々しささえ漂います。

アントニオーニ初体験のこの文章が、果たして彼の作品を正しく”わかっている”のかは全く自信が無いのですが、もっと”わかりたい”という意欲が湧いてくる作品であることは確かでした。
アントニオーニ作にまた接する機会があれば、積極的に追いかけていきたい、と思います。
tjZero

tjZero