ほしの

サウダーヂのほしののレビュー・感想・評価

サウダーヂ(2011年製作の映画)
5.0
地方都市のリアル。バカでかい「イオンモール」と「光の森」(光の森は九州方面に行くとあるはず、いとこが光の森を見ると田舎に来たって気がするとか昔言ってた)のようなノッペリした均一化地獄、ある種、文化壊滅地獄。空族の映画は本作とバンコクナイツしか観ていないけど、登場人物は楽園の話ばかりするも、それは地獄にいるからって感じか⁈

舞台が地獄ならサウダーヂとは、地獄から脱出を夢見ることか、その先は過去なのか。地方という地獄にのまれ手足を取られもがく者もいれば、馴染む者も、死ぬ者も。

とにかく登場人物が多いけれど、その誰もが独特の魅力と独特のリアルに放っていてずっと観ていられる。そして多分編集のリズムが周到。オーバーラップする繋ぎ方のおかげで筋らしい筋がなくても映画に興味を持続させる。そしてその筋らしい筋がない群像劇だからこそやはりリアル。そしてそのリアルの所以たる断絶された人々の様子は構造的な問題の被害のよう。さらにその問題が構造的だから個人での突破は激ムズか⁈とにかくみんなしんどかったり楽しかったり、ただ鬱屈はすぐそばに常にある。

交流の途絶えは国籍、年齢と様々。地獄からの脱出を夢見て思いだけは楽園へ飛んで行く。だから言葉が実体や意味から遊離して、声だけがツルツルすべる。すべる言葉は虚しい。そこで必然的にこの地獄だからこそ立ち上がる固有のヒップホップ!言葉で殺す。魂のライム。を目指す(?)ラッパー 田我流。彼のフリースタイルに映画観終わってから思い出し泣き。

断絶ゆえに考えが煮詰まってみんなおかしなことしているし、そのおかしさは煮詰まりきって先鋭化することもある。地方というリアル地獄こそがハイパー日本カルチャーでそこから生まれるヒップホップが唯一無二で最先端となる可能性、その芽は感じられた。しかし物語はそんなありふれたサクセスの幻想を楽観的に映さずあくまでリアル。この、芽はまいた、という映画の姿勢こそが絶望に効くのではないかと泣く。唯一見せてくれる幻想は本当にただの幻覚であってすべてを吹き飛ばすほどあまりに悲しくて泣く。泣く。泣く。

この映画をまた観たいと思うも、その願いは叶い難くてサウダーヂ。言葉がスベる。
ほしの

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