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アウトレイジ ビヨンドのしゃにむのレビュー・感想・評価

アウトレイジ ビヨンド(2012年製作の映画)
3.8
「怒鳴ルド、この野郎‼︎」

北野将軍はミサイルマンだった…⁉︎

↓あらすじ
マル暴の警察官とホステスの水死体が見つかった。山王会の仕業だと警察は睨む。会長が代替わりしてからの山王会は政界にも幅を効かせる極道組織中急成長していた。山王会にたかる悪徳刑事の片岡に上層部から圧力がかかり山王会を取り締まる事になる。幹部を唆して内部分裂を図るがやり手幹部の石原がいる限り組織は安泰である。そこで石原の元組長で服役中の大友を出所させ、因縁の中にある木村と組ませて山王会と揉め事を起こさせることにする。2人は二大勢力の花菱会に応援要請を求めるが喧嘩別れに。そんな折に石原の腹心船木の拉致に成功、残忍な拷問の末に加藤会長の先代殺しの証拠を掴む。証拠を幹部に送りつけ組織がバラバラになり…

・感想
台詞を「この野郎‼︎バカ野郎‼︎」に制限して映画を成立させ、昨今の台詞に溢れるトーキーへ殴り込みをかける意欲作第二弾。滑舌が悪くて聞き取りづらい北野将軍の悪口合戦が見どころというこれまた妙竹林な作品である。任侠映画にあった仁義はあったもんじゃない。とことんワルさを追求し「全員、悪人」というキャッチコピーは伊達ではない。裏切り、内通、密告は当たり前。切れるものならオヤジだって裏切る。正義の味方が不在。悪人の中でも一番とばっちりを受ける損な役回りが主役だからとほほ。その分、仕返しの時の爽快感は格別。ゴッドファーザー然り派閥争い組争いが複雑で頭を悩ます極道映画の中では比較的話の展開がシンプルで観やすい。全盛期の北野映画ほどビリビリ来るものは無いが、普段は優しい俳優達が「バカ野郎この野郎」と啖呵を切る様は怖いやら面白いやら、ギャップが今作の醍醐味である。前作ほどバイオレンスシーンは過激では無いが、絶対にヤクザ役を演じなさそうな新キャスト達の豹変ぶりが面白く見ものである。むしろ何故ヤクザ役が回ってこなかったのかと不思議なくらい様になっている。悪の権現は北野将軍…?悪口を磨きたい方は鑑賞推奨。

・弾丸この野郎‼︎
経験則上、なかなかヤクザ映画では笑えないものだが今作は滅法可笑しい。特に面白いシーンは大友と木村が花菱会に加勢を頼みに行くシーンだった。普通下手に出るものだが喧嘩っ早い大友(北野武)は西野(西田敏行)中田(塩見三省)の煽りに即逆ギレ。「指詰めんかい‼︎やってみろや、この野郎‼︎」「うるせんだよ、バカ野郎‼︎」何とも語彙量が少なく省エネ志向の悪口合戦だけどたまらなく面白くて愛おしい。西田敏行の極道役は何となくイメージ出来たが、塩見三省(あまり知らなかった)この人本職の方…⁇「顔面凶器」こと小沢仁志を初めて見た時に感じたリアリティの再来だった。普通はこんな役柄は似合わない方らしくまたまた北野将軍の手腕にひれ伏す(将軍こそ真の悪い奴) 次に面白いのは、石原(加瀬亮)のビビリ具合だろう。山王会実質No.2の実力者、ビジネス通で組織をこれまで大きくしたのは自分だと言い張るくらいの自信家にもかかわらず、元組長の大友が出所した噂を聞き付けると自信がどこへやら、手下に怒鳴りつけて大友を始末させようとする。始末に失敗すると顔面蒼白で発狂せんばかりに当たり散らす。勢力で言えば絶対、石原が勝つだろうにこのビビリっぷりは可笑しい。それだけ大友という存在が大きいのだろうと彼の心労から読み取れる。しかし、大友に捕まってからの石原の手のひら返しは情け無い。あれだけ威勢が良かったのに命乞い、謝罪、失禁、とまぁ何たる様。カリスマっぽい人間は実は打たれ弱いのだろう。石原の遅過ぎる謝罪に対する大友の返答方法が洒落ている。「NO,1000球」恨み晴らしにズブリと殺るよりも悪趣味な処刑方法は嫌いじゃない。あまりカリスマ性が感じられない三浦友和の死に方は悲惨過ぎて逆に面白い。椎名桔平を超える死に方を次回作に期待する。
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