クレミ

アウトレイジ ビヨンドのクレミのレビュー・感想・評価

アウトレイジ ビヨンド(2012年製作の映画)
4.0
生と死が入り乱れ、怒号が飛び交い、それぞれの思惑が重なり合う中、北野武演じる大友だけがあきらかに浮いている。
誰もが死を目の前にして命乞いをする中、「さっさと撃てバカヤロウ」と平然とそこに立ち、腹を刺されても最後まで生き残り続ける。女の務めを断るシーンなんかもそう。
とにかくたけしだけが生、死、性、欲、互いの思惑、そういうものに影響をされない、たけし自身から感じられないようなキャラクターになっている。

ヤクザの世界はある程度の「ルール」みたいなものがあって、仁義だの落とし前だの目論見だのいろいろあるわけだが、『アウトレイジ』シリーズはそれを映画の構造としてかなり上手くはめ込んだものだと思っている。それに沿って動かされる人間、死ぬ人間、生き残る人間、利用する人間。ただそこでひとり浮いているたけしだけが、その構造の外側から内部に接触しているような印象。下手したら浮きすぎて不自然になってしまいそうなやり方を、キチンと使いこなせているなと感じた。

あと、前回よりも「北野武っぽさ」が薄れていて、エンタメ色が強くなったなと思った。北野作品で好きな要素のひとつである「絶妙な間」が会話で埋め尽くされていて、そこもきっと意識して撮っているのだろうと思う。時代に合わせて実験的に作風を変化させていく監督・北野武、やはり好きだ…底が見えない…
クレミ

クレミ