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新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君にのninekoのレビュー・感想・評価

4.6
美少女アニメ/ロボットアニメとしてのフェティッシュな魅力を自ら凌辱するようなおぞましい描写の連続と、破綻すれすれまで広がった風呂敷を畳むどころかめちゃくちゃにぶち壊すことを企図されたかのごとき実験的なストーリーテリング。庵野秀明の(というより、わたしたちの)脆く醜い内面の曝露と、その全てを激しく断罪する強烈な批評の間で、映画は捻れ上がり、引き裂かれんばかりである。そしてその対立構造はそのまま、人類補完計画を受け容れるか否かという命題へと収斂、いや、拡張してゆく。

本作は、たとえば『ファイト・クラブ』のように、ある時代の一面を克明に刻み込んでいるという意味において、文字通りにエポック・メイキングな映画である。しかし、『ファイト・クラブ』を、テン年代に生きる我々の何がしかを捉えた映画として観ることが今や困難であるのに対し、『Air/まごころを、君に』の問題提起はアクチュアリティを失うことなく我々に思考を強いるだろう。それは、そもそもTV本編を含む『エヴァ』のストーリーと主題そのものが、旧約聖書と精神分析をベースにした実に普遍的な(類型的と言ってもいい)ものだからである。しかし、類型的な物語を鮮烈に、斬新に語り直しているからこそクラシックはクラシックなのだし、インターネット→SNSの発達によりミクロレベルでの「補完」があちこちで行われるようになった世界を生きる我々にとって、本作はまた違ったリアリティを伴っているように感じられることだろう。
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