よしかずおかやま

パレルモ・シューティングのよしかずおかやまのレビュー・感想・評価

パレルモ・シューティング(2008年製作の映画)
3.8
売れっ子カメラマンがあてもなくさまよって、自分の死と対面するというロードムービー。
難しいですね。うーん。難しい。

ヴェンダースの映画は人に伝えようとすればするほど、分からなくなる。
何が魅力なのか。何に自分が惹かれているのか。

ヴェンダースの映画と向き合うこと自体がロードムービーなのかもしれない。

一つ僕が考えるのは、ヴェンダースが描く映画の主人公はほとんどが孤独で、どこか社会から取り残されているような人物、アウトサイダーみたいなのが多い。

そしてどの映画でも主人公は、自分が誰なのか、何を求めているのか分からず旅に出る。
往復の切符なんか持たない、片道切符だけ持って旅立つ。

アウトサイダー的な主人公が、いつの間にか誰かを、世界を、社会を救って最後はみんなのヒーローになってハッピーエンドな映画はいくらでもあると思う。

でも、ヴェンダースの映画ではそれはない。
そもそもヒーローなんか出てこないし、ヒーローが答えを見つけ出してくれることも、主人公が答えを見つけることもない?
あるかもしれないがヴェンダースはそれを描かない。

ヒーローがいないから、旅は終わらないのだろうか?

映画の主人公はさまよっている。
自分と他人、自分と社会、その中での役割はとは?

パレルモシューティングでは、自分の生と死。にさまよっている。

主人公は社会的には地位と名誉がある、売れっ子カメラマン。
でも、そこから何の安息を得ることも出来ず、不眠症で死の夢を見ては目覚めてしまう。

やがて、彼は死神を見るようになる。
その死神役がデニスホッパーで、デニスホッパーの演技には圧倒された。

そして、撮影中に見かけた’パレルモ’という地名に何かを感じ、パレルモに赴く。

そこからは・・・・・・

結果なんか分からない、ただ何かを、新しい世界を見つけ出すために主人公は旅に出る。

ヴェンダースの映画に魅了されるのは、自分にも、他の誰にも分からない、人それぞれの人生の結論が見えないのと同じようなものを感じるからだろうと思う。

ヴェンダースの映画には、結論がない。
映画のその先と、その先にある終わりは観る者に委ねられる。

パレルモシューティングもとても印象的なセリフで終わった。


「You」


その一言だった。
そこから何を思うかは、人それぞれ。


その後、ベスギボンスのひざまずきたくなるほど、美しい曲が流れてた。
劇中はニックケイヴ、ヴェルヴェットアンダーグラウンド、ポーチスヘッドとかが爆音で流れるので、サントラ欲しいな♪