広島カップ

黄昏の広島カップのレビュー・感想・評価

黄昏(1981年製作の映画)
3.5
元々軽い猫背の俳優ヘンリー・フォンダ。
本作ではそれに加齢による円みが背中にプラスされて更に円熟味を加えて来ています。

引退して妻と夏の間美しい湖畔の別荘で過ごす元大学教授。
心臓に病を抱え更に記憶障害も出始めている。
そこへ離れて暮らしていた以前より折り合いの悪い一人娘がフィアンセを連れてやって来て、孫を預けてヨーロッパに行ってしまうという展開。
孫の男の子と過ごすことになった老夫婦のひと夏。

老人を描いた作品は数多ありますが、優れた作品は老人の老いをありのままに滲ませて来ます。

"地獄の入江"と呼ばれるボートで入るには危険な湖の入江に孫と一緒に大鱒を狙って向かったシーンが見所のひとつ。
生意気な孫に釣りの楽しさを教えた主人公は、調子に乗ってそんな危険な所にしかも天気が崩れそうな夕方に孫を誘って出掛けてしまう。
物事の判断能力が落ちているのもあるが、孫に楽しい思いをさせてやりたいと思う老人の危うさ。
ただ単に落ち着いたお爺さんではない老人。
ヘンリー・フォンダを主役に据えてこうしたヒヤヒヤのシーンを入れて来るとは思いませんでした。

物語の最後には湖の岸辺が美しい紅葉に彩られ奥深い老人の人生を象徴していますが、同時にある意味子供が冒してしまうようなこうした危うさも正直に描いているところに好感を持ちます。
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