昔、浅草東方のオールナイトで何回か見た。清張の黒い画集のシリーズは3作あるが、今作が一番面白いね。今回アマプラであったのを見直したら変わらず面白かった。
小林桂樹が某企業の課長。冒頭で当時の渋谷や丸之内が映る。月給5万でマイホームで家族を養う、当時の中流以上のエリートだったと思われる。
その課長が会社のこと浮気中。警戒心が強く隠し通してきたが、その帰り道でご近所さんと挨拶してしまう。
そのご近所さんが殺人容疑で逮捕。無実の証明の為に課長に証人になるよう願うが、浮気がバレるのを恐れ嘘をついてしまう。
自分が嘘をついたためにご近所さんが無実の罪で死刑になる。その良心の呵責に苦しむ主人公。一方で奔放な愛人の隣人から強請をうけるなどトラブルが続く。
一度ついた嘘のために次々と嘘を重ねなければならなくなる泥沼。確実に破綻に向かっているという焦燥感。そういう見る側に“焦り”を煽る心理描写が素晴らしく巧みだ。
容疑者になった奥さんが泣いて懇願するシーンのなんとも言えない痛ましさ。菅井きんの演技力が冴える。
小林桂樹も奥さんも愛人も決してイケメンじゃ無い。愛人なんて特に美人でも無い。それがぎゃくにリアルで艶めかしい。
松本清張原作で、橋本忍が脚本と骨太な構成で非常に見応えある。