映画おじいさん

黒い画集 あるサラリーマンの証言の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

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監督が全て違うけど全て最高な黒い画集シリーズの第1作。しかし映画としての出来がシリーズ最高な分、個人的な愛着度はちょっと低いのが本作。

タイプ音のみの中、タイピングされていくオープニングクレジットからヌーベルバーグっぽくてかっこいい!と素直にシビれる。

橋本忍脚本なので主人公の気持ちがナレーションとなってだだ漏れするけど、本作の場合、それがリズムになっていて気にならない。

映画ばかり観ている主人公・小林桂樹はもちろん、脇のキャスティングも素晴らしく、中でも気弱く貧しい小市民を演じる織田政雄と、その妻の菅井きんは最高。泣きつくのはやり過ぎな感じもしたけど。
菅井きんは後の意地悪キャラよりも、貧しくて薄幸で世の中の隅っこの方で生きているようなキャラの方が絶対に上手い。前年(59年)の『七つ弾丸』も不幸が全身から放射されるような演技で最高だった。

とにかく二人のシーンは短いですが理想の夫婦像を垣間見ることが出来ます。

本編も誰が観てもつまんないはずのない鉄板サスペンスなので是非。