ちろる

キューポラのある街のちろるのレビュー・感想・評価

キューポラのある街(1962年製作の映画)
4.0
うだつの上がらない父親。
乳飲み子を抱えた母。
わんぱく盛りの弟。
を家族に抱えて自分のために生きることを諦めなければいけない少女。
煙の立ち上る鋳物作りで栄えた川口を舞台に、貧しさをバネにして明るく生き抜く少女の生き様を、まだまんまるい顔をした若い吉永小百合さんが演じてる。

父親には朝鮮人となんか仲良くするなと言われても、聞く耳もせずに娘も息子も朝鮮国籍の友人と絆を育む些細なシーンたちが殺伐とした彼らの世界を少しだけ温かく見せてくれる。
原作を読んでいないので、当時の工場地帯の貧しい生活環境も、朝鮮戦争特需について、そして在日コリアンの朝鮮帰還について把握していないまま観たものの、脚本が非常によくできていてキャラクターがしっかりと描かれていたので非常に分かりやすい。
ともすれば救いがない仕上がりにもなりそうだけど、とびっきり明るくめげない主人公が居場所を見つけようと諦めない姿は逆に観ている方が元気をもらえるくらいだ。
モノクロであることを忘れるような主人公 純ジュンの瑞々しさが画面からこぼれてきて、彼女たちが遣る瀬無い現実を切り開いていける気がしたラストでした。
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