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ホテル・ルワンダのdeenityのレビュー・感想・評価

ホテル・ルワンダ(2004年製作の映画)
4.0
先日ルワンダ大虐殺の話をある番組で見て知りその痛ましさに衝撃を受けたのだが、ちょうど職場の方に貸していただき、その知識とリンクして史実の重みを感じながら見ることができた。

その番組で学んだことだが、事の発端はルワンダがベルギーの植民地とされていて、元々仲の良かったツチ族とフツ族を分断し、身体検査を行なって鼻が高く肌の色が白人に近いツチ族に政治的権限を与えたことから始まった。
植民地化された不満の標的をベルギーではなくツチ族に向けさせるために取られた分割統治という政策で、作中にもあったIDカードというのを発行したようだ。思い返すと序盤に二つの民族の違いがわからないって会話もあったが、大して違わないはずの二つの民族を対立関係にしてしまったこの政策は決して許されないものである。
結果的にツチ族に怒りが向き出し、その後ベルギーが撤退。するとフツ族が政権を奪回するのだが、1994年フツ族系大統領暗殺。その犯行をツチ族だと思ったフツ族が怒りを爆発させ、惨劇が起こるに至ったようだ。
虐殺を促すラジオ放送が流れ、同じ国民であったはずの相手をゴキブリだと罵り、3ヶ月にも及ぶ大虐殺が始まった。延べ100万人が殺害され、200万人は国外逃亡したそうだ。

本作のポールはそんな状況下でも1000人以上の命を救った英雄的立場の人間であるが、特に印象に残っているのは外国軍が撤退していった後の言葉だ。元々確かに裕福で、支配人としての人望もあり、頭も切れるポールだったが、いざという時に家族だけはと賄賂を渡していた白人から平気で見下されるシーン。「お前は白人でもなければニガーですらない。アフリカ人だ。」と。それだけ下に見られた言葉を吐かれて、自分の立場をわきまえたと改めて呟くあの表情には胸を絞られる気持ちにさせられた。

知識として歴史を知っておくといかにポールの行いが素晴らしかったかということが実感できた。
やはり事実を知っていても大量に道に転がる死体の山には言葉を失うし、一言で100万人の命が失われたと聞いても恐ろしくて実感もわかない。しかし、こういった出来事が忘れられてはいけないと思うし、歴史の過ちや間違った行いを繰り返してはいけない。

途中、白人記者として雨の中で国に返されるホアキン・フェニックスがホテル従業員に「傘などいい。恥ずかしい。」と呟いていた。本作を鑑賞し、ああやって感じる人が増えてくれることを願いたい。
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