ちろる

マイ・レフトフットのちろるのレビュー・感想・評価

マイ・レフトフット(1989年製作の映画)
4.0
原作者C・ブラウンの実話を映画化した作品。
運命を自分の力で切り開いた1人の男のお話。
生まれながらの小児脳性麻痺で、左足以外ほぼ動かない作者本人の物語ながらも、決して悲観的になりすぎず、テンポもよく、なんといってもダニエル・ディ=ルイスの迫真の演技に圧倒される。

クリスティ自身が素晴らしいという描き方ではなく、愛あふれる母をはじめとするユニークな大家族との何気ないやりとりが愛おしくて仕方ない。
単なるハンディキャップを持った1人の男の幸せまでの物語なのではなく、これは深い深い家族の愛の物語でもある。

障害によって悔しい想いをすることも、悲しい思いをする事も多々あったであろうクリスティが、運命を切り開くには並大抵の努力では足りない、わたしには想像もできない。
でも、この作品の良いところは哀れみを煽るものではなく自分にしか経験し得ない物語を見つめた事。
クリスティは誰かの介添えがなければ散歩する事も食事する事もでないが、彼の心の世界は果てしなく広い。だから観ていて鬱屈したものは何も感じない。
聖人として描くのではなく、人との関わりもあくまでも生々しくあからさまに。
時に胸がキリキリさせられる場面もある。

限られた表情の中で見せるダニエルの繊細な演技は、素晴らしい人間賛歌の物語を描き、私たちを爽やかな感動で包んでくれます。
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