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病院で死ぬということのtomひでのレビュー・感想・評価

病院で死ぬということ(1993年製作の映画)
5.0
市川準監督の追悼特集上映があり『病院で死ぬということ』が35㎜フイルムで上映されるというので目黒シネマへ。フィルム上映って今となってはめっちゃ贅沢。この映画を観るのは3回目。昔観た時は映画後半で泣いたが、今回は映画冒頭のドキュメントインサートから泣けてきて、結果、上映中殆ど泣いてた(笑)

誰にでもいつかは訪れる『死』だが、普段『死』を意識して生きる事は殆ど無い。病室のベッドに横たわって漸く意識できるもの。この映画を見終わった後は普通に生きている事がどれだけ奇跡的な事なのか、当たり前の日常がどれほど尊い事なのか、深く認識させられる。

そしてそれを意識させる為のこの映画の構造が秀逸。病室の長回し固定画面と市井の人々の日常、誰もが経験する風景のフラッシュカットとが並列に展開され、病室シーンの『死』とドキュメントシーンの『生』が強烈なコントラストで浮かび上がってくる仕掛け。こんな構造の映画観たことない。凄いよ市川準監督。

30年近く前の映画なので、病院での癌告知の在り方が現在とは違い、違和感もあるが、病気になる事や死ぬという事、それらを含めて『生きる』事について一考するきっかけになる映画だと思う。

それにしてもこんな傑作が映像ソフト化もされず(一度VHS化があるが)配信でも観られないなんて残念すぎる。(癌告知の問題?)偉い人なんとかして。
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