GreenT

ダウト 〜あるカトリック学校で〜のGreenTのレビュー・感想・評価

3.5
メリル・ストリープ演じるシスター・アロイシアス、いましたよね、こういう厳しい先生!『プラダを着た悪魔』でもそうだったけど、メリル・ストリープって、怖いおばさんがハマり過ぎていてなんか笑えて良いです。

対して、生徒に友達のように接し、人気者のフリン神父をフィリップ・シーモア・ホフマンが演じています。

最初は、頭の固いシスター・アロイシアスより、生徒の気持ちを分かってくれそうなフリン神父の方が好印象なんですけど、職場(教会)での力関係として見ると、女性はどんなに仕事が出来ても男性の下、のような扱いを受けていることがわかり、女性としては「うーん」って感じになる。

シスターたちが厳格に神の教えに従って質素な生活をしているのに、神父たちは酒は飲むはタバコは吸うわ、肉は食べるわ・・・。私は普通の会社で働いていますが、男の人って本当にこういう「ルールは守らない、自分だけは例外」みたいな感じで、男と女でダブル・スタンダード的なところがあるなあと本当に腹が立つ。

それとか、フリン神父が進歩的で、これからは教会も変わって行かなくてはならない、世俗のクリスマス・ソングとかも歌おう!みたいなことを提案しているけど、伝統を守ると言うのも大事だなあと思った。教会ならではの粛々とした感じは変えない方が良くない?

若いシスター・ジェームス(エイミー・アダムス)は若いからフリン神父に賛成するけど、私はトシを取ったんでしょうか、マジメにやってるのに「お局様」扱いされるシスター・アロイシアスにちょっと同情した。まあこの人も頭固すぎるところはあるけど。

で、学校にはたった一人だけ黒人の男の生徒がいて、ドナルド・ミラーって言うんだけど、この子は将来神父になりたいと、フリン神父になついている。フリン神父は、ドナルドが黒人だから浮いちゃってて友達もできないので、特別に優しくしたりする。

ある日、シスター・ジェームスは、授業中にドナルドがフリン神父に呼ばれて出ていき、帰ってきてからは様子がおかしく、酒の匂いがした、とシスター・アロイシアスに報告したもんだからさあ大変。そっからはシスター・アロイシアスはフリン神父がドナルドに性的虐待をしていると信じて疑わず、証拠もないのに決めつける。

で、シスター・アロイシアスはフリン神父を呼びつけて糾弾するんだけど、メリル・ストリープとPSHの演技バトルがすごいんですよ〜。

さらにシスター・アロイシアスは、ドナルドの母親、Mrs. ミラーに会って、息子さんがいたずらされているようなのよ、って言いつけるんだけど、お母さんは、ドナルドはゲイだから、例えいたずらされていようと、嬉しいかもしれない、みたいなこと言う。

これもすごい考えさせられて、公立の中学校では、ゲイだってバレたら殺されかねないのでわざわざカソリック・スクールに入れたと。で、ゲイだってことがバレてなくても黒人だから友達もできない、例えいたずらされていても、優しくしてくれるのはフリン神父だけ。しかも、お父さんがDV夫で、今回のことがバレたら息子を殺しかねないと言う。

このお母さんを演じるのがヴィオラ・デイヴィスなんだけど、黒人、女性、息子がゲイ、と、社会的に小さく小さくなって生きていかなければならない姿を好演していて、胸が痛くなる。

この映画、男女差別、人種差別、LGBTQ問題まで全て網羅していてすごいな!って思った。しかも表面的なエセ・ヒューマニティじゃなくて、「う〜ん・・・難しいなあ!」ってすごい考えさせられる!

で、最後までシスター・アロイシアスとフリン神父、どちらが正しいのかわからない。監督・脚本、原作の戯曲も書いたジョン・パトリック・シャンリーは、「フリン神父が有罪か無罪か」は、フリン神父役の人にしか教えないんだって。

ネタバレはコメント欄で!
GreenT

GreenT