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クッキー・フォーチュンのpikaのネタバレレビュー・内容・結末

クッキー・フォーチュン(1999年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

傑作!最高!こういう映画に出会えるから映画鑑賞は止められない。
バーから酒をかっぱらって夜中に酔っぱらいながら若い女の乗っている車に声をかけ、寝静まった裕福そうな家に台所の窓から侵入する小太りな黒人、、、って非常に画一的な印象を植え付ける登場からその印象をガンガン覆していく演出がめちゃくちゃ粋。「ワルぶってるけどめっちゃいいやつ」理論を巧みに用いているというか笑
その演出によってまんまと黒人ウィリスを好きになり、そのウィリスと親しそうに軽口を言い合うクッキー婆さんにも秒で惚れ、クッキー&ウィリスの血の繋がらない家族の立て直し人情ドラマが始まるのかと想像して涙目になったところで勝手に抱いた妄想をぶち壊す衝撃展開に泣いた。
宗教観も文化も疎いので(じゃぁ語るなよというのは置いておき)不明瞭な感想なんですが、暗に教会(カトリック?)批判があるのかなと、体制批判?感謝祭の日に教会で劇をする姉妹は敬虔なクリスチャンであるが町民には避けられており、皆と交流を持つウィリスとクッキー側と対立している。誰が一番隣人に優しいのかとか、勝手に作ったイメージで自分も他人もコントロールするのは人を人と思わぬ体制ってやつなんじゃないかとか。事件の隠蔽はボロクソだけど、世の常としてはそちらが勝つのではないか、「正直者がバカを見る」っつー格言にツバを吐きかけてくれる素晴らしいドラマなんだけど、映画的な説得力とは違うところで非常に御伽話的な味わいがある。展開に毒気がないところが逆に異端な感じ。その点が個人的に非常にツボったところなんだけど、そこにアルトマンらしい反骨精神があるのかなとかなんとか。

シーンのすべてがウィリスか姉妹の姉かの人間性を物語っていて、その二人の対立でドラマが展開しながら対比が描写される。演出的に楽しいリヴ・タイラーのいちゃこらシーンなんかはドラマ的にはなくてもいいけどウィリスとの関係性においては意味を成していたり、ゆるーい逮捕や捜査などの中盤の展開なども穏やかな空気の中なんでもないようなテンションでとても大事なことが当たり前のように流れていったりして隅々素晴らしい。徹頭徹尾クールな視点のままハラハラさせつつもキッチリ溜飲を下げてくれてめちゃくちゃ粋。ドラマよりもディテールを大事にしているところに魅力が詰まりまくっている。

リヴ・タイラーのクールビューティーな見た目と優し気ボイスの合わせ技が最高!役者の印象とキャラのギャップがアイコン的な魅力になってる。
最後までおバカを演りきったジュリアン・ムーアの多才っぷりも。口角を真一文字にキュッと閉める漫画みたいな表情をよくあんな風に演じれるなぁ、すごく良い!
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