菩薩

ミフネの菩薩のレビュー・感想・評価

ミフネ(1998年製作の映画)
3.9
別に大した話では無い。田舎者である事をひた隠しにしながら都会で成功を夢見る男が、父親の死をきっかけに故郷に帰る事になる。故郷には知的障害を持つ兄・ルードがいる、その兄の世話役にとハウスキーパーを募集したらベッピンさんが来る。彼女にもちょいとした秘密があり、またやんちゃモンの弟君がおり、なぜだか4人での疑似家族生活が始まり、ルードの存在を通して各々が自分の人生を見つめ直す、とそれだけのお話。けどなんか凄い好きな感じで、なんでかと言うとそのやって来るベッピンさんってのが完全に俺好みで(いくえみ綾『かの人や月』の金子うららに似てる…分かる人だけ分かれば良い…)、なおかつ超絶エロいってのがまずあるのだが、何よりこの作品のテーマが「偽りの希望に縋り、偽りの毎日を送る、それもまた人生なり」(勝手につけた)ってのが良くて、あぁ…そうなのよねぇ…そんな風に肯定されたいのよねぇ…と思ってしまったからである。タイトルの『ミフネ』は勿論虎舞竜とトラブルになった三船美佳、では無くトシロー・ミフネの事であり、『七人の侍』の菊千代の姿に皆を重ねている。だからと言って『七人の侍』をまず観なさい!と言うわけでは無い、長いし。人はみんな嘘つきだし、男どもは自己顕示用で常にチンポびんびんだし、女も女でなんかずる賢いとこあるけど…まぁ今更しょうがないよね、そうやっていかない無理だよね、でも嘘ってのは最後まで突き通せるほど甘くは無いよ、と軽やかに真理を語る。そんなのを象徴するのが「人生は大きなクソよ、それをかじって毎日生きていくの」って台詞だと思うが、大事なのはこの先で「でも一番悲しいのは人を傷つける事よ、愛してくれる人をね」ってここを理解していない人間が余りに多過ぎる(まぁ愛されて無いんですけどね俺…)。嘘を付く事自体を否定する訳ではなく、自分の人生を否定する事を否定し、他人を傷つける事を非難するサヨナラCOLORの様な作品。田舎だって都会だって何処に行ったって人間社会は嘘と勘違いにまみれてる。貴方は私にとっての宇宙人で、私は貴方にとっての宇宙人だろう、だから語ろう、クソな人生を少しでも楽に生きる為に、そんな声がこの作品からは聞こえてくる。にしたって冒頭の映画史上最も情熱的な騎乗位で爆笑する、アレを毎日されたら3日で死ぬ…。
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