このレビューはネタバレを含みます
公開当時に観た時は説明不足な印象があり、ところどころ面白いシーンはあるけれど、総体的には中途半端な作品に感じていました。
10年以上経ち 久しぶりに観ると、当時は見えなかった景色が浮かび上がってきて、大変心に響く作品へと変化しておりました。
老いと向き合うことの切なさが歳を重ねたことにより少し理解できるようになり、また煩わしいと感じていた家族という形態が実は狂おしいほどに愛おしいものだと気づいてきたり…そんな変化が作品に対する印象を大きく変えた要因のような気がします。
この映画に戦争の理由とか詳細の説明なんて必要なかった。確かなのは日常が間違いなく奪われるということだけ。奪われたくないと思わせる愛おしい日々の生活があることを丁寧に描いてくれていた。
ソフィのささやかな愛をきっかけに、それぞれの心の奥底に潜んでいた小さな愛がやがて大きな愛へと育っていく。他者への愛と共に卑屈な自己否定が消えていき、自然とコンプレックスが解消されていた。
その過程を瑞々しくユーモラスに描かれた素晴らしい作品だと思いました。
無駄な説明をごそっと省き、子供も大人も自分の感性で見れるように今までに培ったアニメーションの技法を余すことなく使い切ってくれた贅沢な映画だった。
宮崎駿はやっぱ凄いなぁ…と改めて。
個人的なマイナス点でいうと、ソフィの声を老女の声にフォーカスしたキャスティングではなく、生き生きと成長した等身大のソフィの声も大切にして欲しかった。
倍賞さんのソフィ婆さんはチャーミングで愛すべきキャラクターに完成しているので難しい判断になるのですが…