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ハウルの動く城のおーたむのレビュー・感想・評価

ハウルの動く城(2004年製作の映画)
4.3
千と千尋からハウルへ。
私にとってはここからが未体験ゾーン。
やや食わず嫌い気味に避け続けてきた作品でしたが、存外良かったです。

もっとも、破綻しているとの評を目にすることの多かったストーリー面は、たしかによくわからないところが少々。
特に終盤、ソフィーが城を崩壊させたうえでハウルのもとへ向かうあたりは、やや無理があるように見えます。
戦争の背景や、そこにハウルがどう関わっていたのかの説明も十分ではないし、とってつけたようなラストには、作品自体がツッコミ入れてますしね。
前作「千と千尋の神隠し」では、イメージが先行しているとはいえ、ストーリーもしっかり纏められていましたが、本作では、収拾をつけるのに苦労したんだろうなというのがよく分かりました。

が、じゃあ面白くなかったかというと、全然そんなことはなく、映像作家・宮崎駿の、日本産ファンタジーの旗手っぷりを、ちゃんと堪能できます。
ハウルの城のガチャガチャ感に始まり、うっとりするような空を歩くシーン、悪夢的なデザインの荒地の魔女、ワクワクのお引っ越し、ファンタジックな少年期のハウルの世界…と、心惹かれる絵が次から次に出てきます。
「千と千尋」が宮崎版不思議の国のアリスだとすれば、本作は来訪者のいない不思議の国を描いた作品って感じ。
大きな芯を持つ物語ではないにもかかわらず、イメージの奔放さで見る者を引き付ける、ある意味監督の新境地と言える作品だったのかもしれないですね。

そんな「ハウル」で私が何気に好きなのは、ごった煮感満載の顔ぶれが、結局疑似家族みたいになってしまうところ。
年齢も性別も、さらには種族まで違う彼らが、思いを通わせ、お互いにかけがえのない存在になっていく様子は、とても幸福感に満ちていました。
もしかして、彼らの姿は、戦争というテーマに対する製作者の願いとして描かれたのかもしれないな、なんて思ったり。
私に「この作品好きだな」と思わせてくれる、大きな要素の一つでした。
良い作品に出会えて、良かったです。
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