高橋早苗

ハウルの動く城の高橋早苗のレビュー・感想・評価

ハウルの動く城(2004年製作の映画)
3.8
魔法使いハウルは
子ども時代に 流れ星を飲み
ハート(心臓)をなくした男

彼は自由を愛し 争いを憎んでいる
…自由に 空を飛び回るように見えて
その実、私には彼が
とても不自由そうに見えた

戦火の中へ 飛び込んでいくけれど
傷つくだけ傷ついて
その命をすり減らしている


彼自身が、ソフィーに告白する
「僕は 本当は臆病者なんだ
 このガラクタは 全部魔女除けのまじないなんだよ
 …怖くて怖くてたまらない」

怖いからこそ
悪魔と取引をしてでもなきゃ
自分の力を使えなかった?


火の悪魔カルシファーも
ハウルの心臓を抱える代わりに
ひとつ処にしか居られない
つまり 城の暖炉に縛りつけられている

ハウルにこき使われてると言い
みんながおいらをいじめるんだ!と
(あの自虐っぷりは、まんざらでもなさそうで^_^)


自由を愛し
師匠のもとを去った男と

男の心臓(ハート)を抱え
ひとつ処に縛り付けられている悪魔
…この二人 男のかなしさやさみしさ代表

ソフィーの恋愛成就を描いているように見えて
実はこの二人が真の主役というか
監督は二人の男(敢えて、カルシファーも男よばわり^_^)を描きたかったのじゃないかしらん


「守るべき者ができた」と告げ
戦火の中へ飛びこむハウル

「おいらだけじゃだめなんだ」と
ソフィーの一部をねだり
おさげ髪を食べて
大きなパワーを発揮するカルシファー


ソフィーは、ハウルを称して言う
「私たちがここにいる限り
 ハウルは戦うわ
 あの人は弱虫がいいの」


監督が一番描きたかったのは
男どもの弱さと無垢
一番、外には晒せない部分

それが、動く城がつながっている外の世界
「黒い世界」
(ドアの右上にある、黒い出口^^)


映画はハッピーエンドで終わるけれど
この男ども二人
ソフィーの予想を超えた世界を
ずっと内に持ちつづけるのでしょうね
それがあのお城のドア

ラストシーンで空を飛んでいた「動く城」のドアにも
きっとあるのよね
ハウル曰く「自由に生きるのに必要なだけ」の名前と
同じように、あの黒い出口が


魔力をなくしたおばあちゃん(荒地の魔女)が言う
「男なんか仕方のないものだけどさ。
 若い心臓はいいよ
 それに可愛いからね」


…仕方のない者が ここに二人
(マルクルも成長したら、ああなるのかしらん?)
高橋早苗

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