ルビッチのお洒落で、技の効いた上品な三角関係ラブコメディ。
こんなに綺麗事ではないのに後味も良い、極上の作品を作ったルビッチは本当にすごいなあと改めて思わされた。
まず冒頭の列車の中のシーンで心を鷲掴みにされた。
サイレント映画並みに、いやそれ以上に音に頼らずに状況を説明する演出が洒落ている。
フランス語で会話していたがOh nuts
でアメリカ人だとわかり、アメリカ国歌を歌い出すというのもかわいい。
一歩間違えれば魔性の女にも思えるこの女性との三角関係だが、なぜか上品でむしろ正当だと思わされる。
「男の人に普通起こるようなことが女の私にも起こったの」
複数の相手を同時に愛することは、女にもあるのではと。
そしてこの女性は今で言うあげまんなのだろう。
彼女がキャラクターとして魅力的なのは、その点が1番の要因な気がする。
そして二人の芸術家の男が正反対の性格であるというのも、彼女がどちらも捨てがたいというのがわかる。
彼女が二人に「紳士協定」を提案しに家を訪れたとき、彼女の気を引く方法からも性格が出ている。
結局は彼ら自身が納得していて周りに迷惑をかけなければいいよね、とでも言いたげな作品。
80年も前にそんな自由なメッセージが謳われていることに感激。
全体的に笑える箇所が多く、明るくて優しい作風にも癒やされた。