スギノイチ

とむらい師たちのスギノイチのレビュー・感想・評価

とむらい師たち(1968年製作の映画)
4.0
みんな、万博だ景気だと浮かれているけど、戦争で死んでった日本人や、今まさに世界で起きている戦争の事を忘れてんじゃないのか?といったジレンマ。
象徴的なのは、伊藤雄之助演じるスケベ医者・通称「センセイ」だ。
戦時中はフィリピンにいたという彼は、当時の事を聞かれ「“色んなモン”、食いましたよ…」と述懐する。
これだけで、センセイがどういう死生観の元で生き抜いてきたのか伝わってくる。
そこに「ジャッカン」や「ラッキョウ」などといった胡散臭すぎる仲間も加え、「国際葬儀協会」を組織し、葬式をレジャー化させる、という辛気臭いのかパワフルなのかよく分からないカオスなエネルギーが充満する。

中盤の「全国水子供養」はかなりインパクトが強く、日野日出志の漫画に出てきそうな水子や奇形がうじゃうじゃと彩られたグロテスクなパノラマが展覧されていく地獄絵図だ。
そんなギリギリなイベントばかりなのに、狂乱の世の中には意外と受け入れられてしまうのが皮肉だ。
仲間達はマスコミを上手く使い、時流に乗って金と欲の手先となってしまう。
ただ、ガンメンだけが戦争の恐怖と戦死者の鎮魂への執着で暴走していく。
挙句、万国博覧会を模した「葬儀博覧会」という、いかがわしさの極致たるイベントを企画する。
そして、葬博に向けて溜められたエネルギーがクライマックスで爆発する。

葬儀博覧会そのものは『怪談昇り竜』とかで出てきたような見世物小屋というか、いかがわしさよりチープさが勝ったような出来栄えだが、そこからが凄い。
『博士の異常な愛情』や『生きものの記録』的な物語のレールをさらに突っ走ってしまった傑作だ。
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