Yui

アニマル・キングダムのYuiのレビュー・感想・評価

アニマル・キングダム(2010年製作の映画)
3.8
母親が亡くなり、疎遠になっていた祖母の家に世話になる事になったジョシュア。しかしそこは犯罪一家だったという、オーストラリアに実在した犯罪一家と警察の抗争に巻き込まれた17歳の少年を静かに描くバイオレンス映画。

子供は居場所を選べない。
人間が産まれてくる限り、良くも悪くも変えられない現実。最悪な環境下で産まれ育った子供たちも多くの映画で観てきたが、"犯罪一家"で育つのも、貧困と同じくらい劣悪だし、本当に最悪…。

しかもジョシュアは17歳。
何も分からない子供ではないので、引きずり込まれ、巻き込まれて行ってしまうのだ。恐ろしい弱肉強食の世界で正義なんて17歳の子供には何の意味も持たない。血縁というしがらみの、絶望的な毎日。

そんなジョシュアの内面に深く迫り、揺れ動く葛藤が繊細に描かれています。淡々と進むストーリーですがとてもリアルで、実話にほぼ忠実らしいので納得です。

強盗や麻薬売買で生計を立てる叔父たち。
みんなヘロイン中毒で、
喧嘩を売られりゃ銃を出しにやにや。
警察も結構ヤバめだったけど…

極めつけは祖母。
獣の檻に放り込まれたジョシュアを見守り、子供たちには愛情深い、可愛いおばあちゃん。しかし一旦家族がピンチとなれば手段は選ばない百戦錬磨のばあさん。ばあさんながらも、不気味さと怖さがあって、気持ち悪さと迫力を感じる怪演。

この祖母を演じるジャッキー・ウィーヴァーと、物憂げなジョシュア役のジェームズ・フレッシュヴィルの演技が見どころだったなぁ。
ジョシュアが良い。寡黙でバカじゃない。この子は小さい頃から大人の顔色見て育って、きっとお母さんに優しかったんだろうなと勝手に想像しちゃう感じ。好きです。

華やかさはないけれど、ジョシュア目線で犯罪一家の内側を切り取り、リアリティのある、目が離せない良質なクライムサスペンスでした。

『ブレイキングバッド』と
『サンズオブアナーキー』を思い出した。

2021-57

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