教授

少年の教授のレビュー・感想・評価

少年(1969年製作の映画)
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なんだか「万引き家族」のような内容。
血が繋がっていても自分のことしか考えない渡辺文雄と、仕方なく夫に付き従う継母の小山明子。
主人公の少年とまだ赤ちゃんの弟の4人家族。

要するに「父権」にすがるだけのダメ父と、その一家による全国当たり屋行脚で、「少年」は歪んだ逞しさを身につけて行きながら、「ウルトラマン」的なナニガシに自己を投影しながら倫理と現実の狭間で分裂して行く、という物語。

四国から日本を縦断して北海道まで辿り着き。とうとう北の果てまで来てしまった。
潮時を感じ、ようやく「普通の生活」に戻り、ようやく普通の家族になった途端に事件が発覚する。

これらの物語の中で家族なんてものは血の繋がりだけの幻想という物語と、それでも人が集まり暮らしていく中で家族になっていくという物語が並行して語られるつくり。

劇的設定の中にリアリズムな手法を取り入れる、という実に当時のトレンドを牽引していた大島渚、な1本。

「戦後」が始まり。戦争がないだけで、日本は別の方向におかしくなっていくありよう。という意味で今を知ることのできる作品。
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