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少年のnagranydeのレビュー・感想・評価

少年(1969年製作の映画)
3.5
力のない「少年」は正義の宇宙人になりたくてもなれなくて、むしろ親のエゴに振り回されるだけの道具に成り下がる

父親は大して働きもせず、威勢だけはいっちょまえに奮う。それは自分が傷夷軍人で使えない人間であるという引け目の裏返しなのか。不幸といえば不幸だが、この時代ではそんな男と家庭を作るなぞどん詰まりに至るだけだ。

この男が時代錯誤な軍人精神でもって「少年」に説教するシーンがある。時代に適応できない戦争の負の遺産とも言うべきか。

「少年」はこんな男に抵抗しつつも結局は忠義を尽くす。一つは「宇宙人」ほどの力がなかったからだと思う。もう一つは情けない男でも自分の父親でいてほしいという願いなのかもしれない。

最後にこの映画、ウィリアム・フォークナーの短編「納屋は燃える」を彷彿とさせた。時代に取り残され悪事を繰り返しては居場所を転々とする一家とその生活と父親に猜疑心を抱く子供という構図が大体一緒である。
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