ウシュアイア

アメイジング・グレイスのウシュアイアのレビュー・感想・評価

アメイジング・グレイス(2006年製作の映画)
4.3
[あらすじ]
若くして政治家となったウィリアム・ウィルバーフォースは、奴隷貿易に心を痛め、現状を打ち破るべく政治活動を行うものの、奴隷貿易廃絶にはなかなか至らず、挫折を繰り返す。

そんな中、彼を支えていたのは彼が通っていた教会の牧師が作った「アメイジング・グレイス」であった。


[感想]
7,8年前にリメイクされた『白い巨塔』の主題歌として再び脚光を浴びた『アメイジング・グレイス』の歌にまつわる作品。

この曲を作った牧師はウィリアム・ウィルバーフォースと本当に関係があったか定かではないが、奴隷貿易で奴隷船の船長をしており、航行中に嵐で船が難破し、一命を取り留めるものの、失明してしまう。「アメイジング・グレイス」は奴隷貿易という非道の限りを尽くした自分を赦し助けてくれた神に感謝し、讃えた歌というわけである。

このウィルバーフォースは日本で言う「サムライ」といったところだろうか。

日本には武士道があるように、英国には英国紳士としての伝統的な倫理感がある。植民地支配による豊かな暮らしの中で英国紳士道廃れていき、奴隷制肯定派が多数を占めるなか、困難があっても信念を曲げず、紳士道に訴えかける姿は、英国紳士の鑑である。

挫折の際、アヘンチンキにも溺れかけたが、献身的な妻の支えにより立ち直っていく、というのもベタだがとても印象的である。

しかし、奴隷貿易を廃止しても、大航海時代からはじまる植民地支配は続き、インドやマレー半島が自由になったのは50年くらい前の話だ。

日本も同じ道を歩んでいったように、豊かさが伝統的な倫理観を廃れさせる、ということは歴史から学ぶ必要はあるだろう。
(2011年4月15日@銀座テアトルシネマ?)
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