エリック・ロメールは作品を観る度に、その面白さに引き込まれていっていますが、今作は特に素晴らしかったです。
ブレーズ・パスカルの生誕の地、オーヴェルニュ地方の都市クレルモン=フェランを舞台に、カトリック教徒で堅物の主人公と彼が心惹かれた二人の女性との物語を描く。
パスカル哲学やキリスト教に詳しくない自分でも十分楽しめる会話劇でした。
ロメールは会話における行間の読ませ方が秀逸だと思います。
カラーも使えた時代にあえてモノクロで撮影された映像は、ヴォルヴィック産の溶岩石で建てられたグレーの家が並んだロケ地のモノトーンの景観をより美しく見せる為のもの。
派手な色の看板はどけられ、室内は壁紙からインテリア,登場人物の服装まで白黒に統一するという徹底ぶり。
パスカルの〝パンセ〟や、ゴールドマンの〝隠れたる神〟も読んでみたいですし、その後にももう一度本作を鑑賞したいです。
知性と教養を備え、女性の繊細な恋心から人間らしい煩悩や猥雑さも描くことができ、色使いやファッションのセンスも良く、挙げ句の果ては抜群のユーモア性も持ち合わせる男、エリック・ロメールのなんと素晴らしきことか