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果てなき路のtapes201のレビュー・感想・評価

果てなき路(2010年製作の映画)
4.6
あまり期待せずに観たヘルマン御大2010年作。滅茶苦茶素晴らしかった。

バニー・ポインターが生歌歌ってたり、レディ・イヴ、ミツバチのささやき、第七の封印(それぞれがストーリーの重要な暗示になっているのでは)や、セリフの中で語られる孤独な場所で、ウォーレン・オーツ、サミュエル・フラーなど小ネタを挟みながらも、所謂、『映画内映画』の形をとりながら実際に起きた事件を題材にした映画に、その事件自体が入り込み、しまいには喰い尽くされる、という、かなり、トリッキーな設定を遥かに凌駕する入れ子入れ子に入り組みまくる多重構造の中で、「断絶」では交わることの叶わなかった個々の人々が濃密に重なり溶け合い、カタルシスに向かっていく過程を甘美だけれどある意味透徹なまでに俯瞰で描ききる。

それでいて猛烈にエモーショナル。ヘルマン御大以外の何者でもない。本当にため息。嗚呼。エンドロールの最後に『ローリーへ』との献辞、これは、ローリー・バードのことですよね。もう、号泣。参りました。

“監督にはタブーの質問だ。他人が描いた夢に心奪われた時間を知られるのはしゃくに障る”
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