伝説は今も生き続けている。
旧3大ロックギタリスト、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジを産んだ伝説のロックバンド、ヤードバーズは、チャーリー・パーカーの初期の渾名からとられたものだ。後には主にバードと呼ばれ、ジャズに革新をもたらした男、チャーリー・パーカーを名匠クリント・イーストウッドが描く。
パーカーの名をとってつけられたニューヨークの老舗ジャズクラブ、バードランド。今でも現役で、ロン・カーターらがラインアップに名を連ねる。このジャズクラブの名を、後にクロスオーバーの巨人、ウェザー・リポートが曲名としてフィーチャーする。そのインストナンバーを、今度はマンハッタン・トランスファーが奇跡のボーカライズ。なんとソロパートまで、ボーカルで再現したスリリングなナンバーのサビはこう書かれている。
Bird named it, Bird made it, Bird heard it, then played it, Well stated Birdland
It happened down in Birdland
前述のウェザーリポートに在籍していて、バードと同じように麻薬依存で身を持ち崩し、最後は非業の死を遂げた、これも革新的なミュージシャン、ジャコ・パストリアス。彼のデビュー・ソロアルバムのオープニングナンバーが、チャーリー・パーカーの曲(マイルス・デイビスは「俺が書いた」と主張しているが)、「ドナ・リー」。フレットレスのエレキベースを用いて、フラジオレットを多用した今までにない奏法は、まさにベース界のジミ・ヘンドリックス。そのジャコもバードの熱い信奉者だった。
死後も数々の革新者たちに影響を与え続けたチャーリー・パーカー。伝記を読むと、破天荒な生き様は太く短くのたとえ通り、破滅へと向かって昇華していく哀しい運命だったのではないかと思える。
マイルスが、ドン・チーゼルなら、バードを演じのはイメージ的にこの人しかいない。まさに、フォレスト・ウィテカーがずばりはまっている。イーストウッドも彼なくしてこの作品はあり得ないと思ったはずだ。
イーストウッドのジャズ好きの道楽だの揶揄されることも多い本作だが、イーストウッドという映画の世界での天才が、音楽という別の世界での天才に最大限のレスペクトを持って放った本作を、自分は愛さずにはいられない。
部屋の灯を落とし、真空管に火を入れてターンテーブルに載せた盤に針を落とせば、あの軽快なアルトの調べを奏でるバードが聞こえてくる。
伝説は終わらない。