シズヲ

続・荒野の用心棒のシズヲのレビュー・感想・評価

続・荒野の用心棒(1966年製作の映画)
4.2
※2020/2/2 再レビュー

「どしゃぶりのあとに陽は射す」

別に『荒野の用心棒』の続編でも何でも無いが、ある意味であちら以上にマカロニ・ウエスタンのエポックメイキング的作品かもしれない。“悪党同士の対立構図にニヒルなガンマンが割り込んで両者の間で立ち回る”という話の骨子こそ『荒野の~』と似通っているけど、ジャンルとしてのマカロニを象徴するような俗物感は本作のが遥かに色濃い。

棺桶と共に現れる黒ずくめの主人公、泥濘だらけの湿ったゴーストタウン、どぎつい色彩の娼婦たち、残忍かつ背徳的な暴力描写……レオーネ作品の乾いた空気とはまた異なる退廃的なイメージの数々。ガトリングを始めとする奇想天外な娯楽演出も味わい深く、ルイス・バカロフが手掛ける「ジャンゴ~♪」の主題歌もインパクト抜群。凡百の量産作とは一線を画し、そして後続に確かな影響を与えたであろうアクの強い“個性”が秀逸。

特に素晴らしいのは主人公であるジャンゴというキャラクターそのもので、前述したように黒ずくめの装いと棺桶を伴った出で立ちの時点で強烈な印象を叩き付けられる。フランコ・ネロが当時20代前半という事実にビビる(陰のある風貌と対照的な蒼い眼差しが実に良い)。主題歌をバックに泥の中でジャンゴが棺桶を引きずるOPはまさしくビジュアルの勝利。強かに立ち回るアウトローという造形こそ“名無しの男”と共通するものの、あくまで孤高を貫いていた彼に対してジャンゴは全てを失った果てに愛のために生きることを選ぶ。ガンマンと娼婦による傷だらけの愛、泥臭い哀愁はまさしく本作の肝。満身創痍の決闘に挑む終盤は墓場でのシチュエーションや其処へ至るまでの展開も含めてとにかく愛おしい。

強すぎるガトリングは勿論のこと、砦を襲撃するシーンで妙に景気の良いBGMが流れたりとシュールな部分も散見されるけどそれはそれでマカロニ的。ロマンス要素に関しても決して丁寧ではない(役者の魅力と演出で乗り切ってる感が強い)。酒場でのやや間延びした殴り合いや無駄にじっくり描かれる棺桶運搬→黄金奪取シーンなど所々で鈍重なのも多分ご愛敬。
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