桃子

続・荒野の用心棒の桃子のレビュー・感想・評価

続・荒野の用心棒(1966年製作の映画)
5.0
「棺桶ずるずる」

セルジオ・コルブッチ監督のもうひとつの大傑作マカロニ・ウェスタンである。最初に見たのはかれこれ10年前くらいだろうか。西部劇の主人公はたいてい馬に乗って颯爽と現れるのだが、この映画は全く違った。主人公のジャンゴは、なんと徒歩。鞍を肩に乗せ、重たそうな棺桶をずるずると引きずりながら登場する。度胆を抜かれた。あの棺桶の中にはいったい何が入っているのか?毎度、すっかり忘却の彼方だった。
もうひとつの特徴は、ぬかるみである。西部劇に登場する町はたいてい雨の少ない荒れた土地にぽつんとこじんまりと広がっている。ところがジャンゴがたどりついた町は、雨上がりでもあるかのようにどこもかしこも泥だらけで、水たまりまである。たぶん男性の観客へのサービスだろうと思うけれど、着飾った娼婦ふたりが取っ組み合いの喧嘩をする泥レスみたいなシーンまで出てくる。泥まみれの靴が何度かアップで出てくるのが印象的だった。
主人公ジャンゴを演じているのは、撮影当時24歳のフランコ・ネロ。とても24歳の若者には見えない。皺の特殊メイクをしていたようだ。メイクとは気が付かなかったから、これは成功しているのだろう。
ジャクソン少佐が率いる元南軍兵士と、ウーゴ将軍が率いるメキシコ革命軍というふたつの軍団が登場するので、てっきり「荒野の用心棒」みたいに両者を戦わせて全滅させるのかと思ったら、全く違う展開だった。コルブッチ監督は、人生を楽しみ、二度と同じことはやらないことを信条にしていたそうである。ということは、ひと真似もしなかったということだろう。だからこそ、こんな傑作が生まれたとも言える。この映画のあと、“ジャンゴウェスタン”は合計55本も作られたそうだ。監督は決して続編を作らせなかった。その方針を守って誰も本当の続編を作らなかったのは驚異としか言いようがない。続編がないので、この最初の「ジャンゴ」は唯一無二である。
あと個人的に好きだったのが、ジャクソン少佐率いる軍団のシンボルカラーが真紅だということ(笑)。赤好きにはたまらない。西部劇に登場する色はわりと地味な印象が強いけれど、この赤はインパクト大だった。少佐は赤いマフラーをしているし、子分たちは赤い布の目の部分を切り抜いて頭からかぶっている。不気味かつコミカルで、すごく良かった!
先日レビューを書いた「殺しが静にやってくる」と比べたら、私はこちらの方が好みである。なにしろ、ラストがトラジックではないから。
文句なしで満点である。

タイトル画像はネタバレですよぉ。ジャンゴが棺桶を引きずっている画像に変換希望…
桃子

桃子