KnightsofOdessa

活動役者のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

活動役者(1928年製作の映画)
4.0
[夢と適性は合わないことも多い] 80点

ハリウッド女優に憧れるペギー・ペッパーは父親を説き伏せて、彼とともにハリウッドにやって来る。5年前のルパート・ヒューズ『売られ行く魂』では"堕落の街"ハリウッドについて、堕落しているのは映画でも街でもなく堕落した人々であると言い訳じみたことを並べていたが、そこから5年も経てば"映画女優"は憧れの職業になって、その内幕をコメディに昇華できるほどの余裕を得たらしいことが分かる。ペギーが目指すのは所謂"シェイクスピア女優"であり、それこそを"演技力"と見做しているが、その壮大な夢を聴いたコメディアンのジミーはギャグとして完成しているとして目を付け、コメディの道へと導いていく。確かに、本人は大真面目にやっているのだが、スタジオのオフィスで演技が出来るか尋ねられたときも、顔をハンカチで隠しながら横で父親が言った感情の表情を一つずつ出していくというコメディエンヌっぽいことやってるし、本人が気付いてない&認めてないだけで適性は十分すぎるほどあるのは最初から提示されている。

一作目にしてコメディエンヌとして成功したペギーは、念願叶ってシリアスなドラマに起用されるも、適性ゼロな上にボンクラお嬢様の傲慢さまで表に出てしまい、映画は大失敗に終わる。しかし、その視点は既に喜劇側に誘導されているので、涙を出すために目の前でスタッフに玉ねぎを切ってもらったりといった、大真面目な行動の文脈が変わり、マリオン・デイヴィスの自然体でコミカルな演技も相まって、悲惨な展開を全く感じさせない。シリアスな題材の中にスラップスティックというチャップリンとスタージェスの融合みたいになってて最高だった。

ちなみに、監督がカメラの前で爆笑しながら腕をブン回しているので、多分何も写ってないはず。あと、チャップリン本人がサイン集めマニアのチャップリン役で登場している。
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