真鍋新一

砂漠の鬼将軍の真鍋新一のレビュー・感想・評価

砂漠の鬼将軍(1951年製作の映画)
3.5
「いやァ、実はナチスにもすごく優秀な軍人もいたんですよ。でも、ヒトラーとその取り巻きがバカだから、優秀な人間ほどナチスではヒドい目にあったんです…!」ということをアメリカ人が演じ、描いた戦争映画。勝者による歴史の再構築としてはかなり巧みなものだ。敵ながらアッパレが言えるのも、勝ってこそでしょう。

それはともかくとして、グッと緊迫した戦闘場面は、後年(1960年代)の超大作戦争映画よりも見応えがある。本物の戦争を撮影したニュースフィルムが挿入されるのは戦争映画の常で、再現するお金がなかったんだな…とか余計なことを考えてしまうのだけど、この映画では絶妙な編集のテンポで本編に溶け込んでいて、砲弾が絶え間なく炸裂する最前線の描き方からは、むしろ『ブラックホーク・ダウン』などに代表される、湾岸戦争以後の戦争映画に近いものを感じた。

調べてみたら、監督のヘンリー・ハサウェイは第一次世界大戦で陸軍に従軍し、砲弾の教官をしていたらしい。やっぱり本当の戦争を知っている人の映画だった。その姿勢は冒頭から明らかで、敵味方の双方に大きな犠牲を出す戦闘シーンからは、戦争の描写にかけては絶対に手加減してやらんぞという強い意志が感じられる。

要所要所の特撮も見事で、この時代にはおそらくスクリーンプロセスくらいしかなかっただろうに、巨大な大砲や海岸線の防衛ラインを視察する場面ではかなり大規模で緻密な合成が使われている。走行中の車が空から集中砲火を浴びるカットも短いが効果的。

優秀な主人公との対比ということもあって、ここに出てくるヒトラーは、コメディ映画を除けば、どの映画よりも徹底して愚かに描かれている。太ってしまった最近の鳥肌実に似ている。
真鍋新一

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