タケオ

ストリート・オブ・ファイヤーのタケオのレビュー・感想・評価

3.5
ロック文化と西部劇を融合した'笑ってしまうほどクールな映画'•••になるはずが、全てがスベりにスベりまくってただの'笑ってしまう映画'になっちゃった大珍作。ダイアン•レインのライブ•シーンは口パクだし、キザぶったマイケル•パレは鼻につくし、パッツン頭のウィレム•デフォーなんて最早バカにしかみえない。もちろんそんな作品がヒットする訳もなく、制作費1450万ドルに対して興行収入810万ドルという大赤字になってしまった。しかし、しかしである。世界で1ヵ国だけ、本作が大成功を収めた国があった。何を隠そう、他ならぬ'日本'である。作中曲の『今夜は青春(Tonight Is What It Means to Be Young)』(84年)は椎名恵のデビュー曲『今夜はANGEL』(86年)としてカバーされ、本作の悪役レイヴェン(ウィレム•デフォー)はウッチャンナンチャン南原清隆のコント'殺し屋レーベン'のモデルとなり、第58回キネマ旬報ベストテン外国映画ではなんと読者選定1位に輝いているのだ。本作が公開された84年には『アマデウス』『パリ,テキサス』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』といった名作が数多く公開されていたというのにである。しかし「なんでだよ⁉︎」と思う反面、本作が唯一無ニの魅力を秘めているのもまた事実。全編を支配する空回りしたクールさ•••即ち'バカっこよさ'は、一級品を目指して制作された作品群には到底出せるものではない。ベッタベタな王道ストーリーの中に'やり過ぎ感'と'安っぽさ'が絶妙なバランスで共存する'娯楽としての魅力'が、当時の日本とマッチしたのだろうか。そんな魅力が今なお廃れていないのだから、なんだかんだで凄い作品である。
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