カロン

別離のカロンのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
3.9
色々上手く作ってあるな、と思った。真実はどうだったか、というところではなく、どこに行き着くか、というところに主眼があるサスペンス。状況の展開の仕方とか、複数のものを同時に映すカメラワークとか、特に楽しいことを起こすわけではない映画を展開させる上で、その辺が上手だったなという印象が強い。冒頭から、家族が同じ空間で別のことをしているということが、上手に撮れていたのが大きく影響していそうだけど。登場人物も、コントロールの効く範囲で展開されていたように感じる。

登場人物のほとんど全員、思い描く理想の終着点があるのだが、誰の理想にも行きつかない。理想はあるけど、そこに至るための建設的な折衷を、大人たちほど取ることができない。状況がひとつひとつ動き、理想との距離が遠ざかっていき、受動的な登場人物が増えていく。
自らの行動だけでは問題が解決をしえない分なのか、娘の視座が最も高い。制限がある中、理想に向かって能動的に行動するが、世の中の嫌な部分を覗いていき、傷ついていく。
娘が、相手の娘の睨み合うシーンなんか非常に辛い。さっきまで遊んでたのに……。
最後の最後まで娘の能動的な選択によって未来が変わる。能動的な選択が取れる娘は、確かな強さを感じさせるが、どちらの選択も娘の理想ではない。
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