マピンターズボーン

別離のマピンターズボーンのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
4.5
【皆さんは嘘の語源を知っているだろうか?】

それは紀元前300年頃に存在した中国の王朝の名前が由来である。
その国の名は嘘(キョ)。
その帝の側近である鵜奏という武人の大きな嘘が発端で滅亡してしまった事が語源と言われる。






...と事実とは異なることをまるで本当のように語ることを嘘という。


さてイスラムの教えでは「嘘」は基本的に神への冒涜とされている。
この映画のテーマとなるのも「嘘」
普段わたしたちは何気なく嘘をついて生きている。
しかし彼らには嘘というのは非常に重要な位置づけとなるわけだ。

いやいやしかしすごい作品に出会ってしまった。
イラン映画となかなか馴染みのないジャンルではあるが見事に度肝を抜かれてしまった。
ただ最初に断っておくが決して明るい話ではないためそこはある程度の覚悟が必要だ。

第84回アカデミー賞外国語映画賞受賞。
全世界で90冠を超える映画賞を総なめ。
オスカー&ゴールデングローブ賞を獲得した最初のイラン映画。

脚本や伏線が非常にすばらしい為、文化の違いはあるがすんなり物語に入り込むことができる。夫婦間そして娘の気持ち。被害者と加害者それぞれが交じり合い至極上等なプロットに仕上がっている。

ここに出てくる登場人物に悪い人は誰も出てこない。
誰もが家族を思い
誰もが心の弱い部分を持っている。

ただそれだけ。
ただそれだけなのになぜここまで苦悩を味わうのか?

その不器用な部分が負の連鎖として積み重なりもはやどうにもならない所まで
家族を追い詰める。

圧倒的にリアリズムで迫ってくるその構成に狡さと締め付ける思いが交互に襲ってくる。

ほんの少し...そう。
ほんの少し歩み寄ればそれは簡単に解決するはずなのにその少しが永遠に届かないのだ。
この歯がゆさゆえに後半たたみかける展開に僕は涙を堪えるのに必死だった。

そしてラストの余韻がまた素晴らしい。

一言でいうとこの監督ズルい。

圧倒的にズルい。

このラストを持ってくるのは絶対に卑怯だ。

しかしこのラストしかないのだ。
悔しいがラストが完璧すぎて一日たった今も余韻にどっぷり浸りきっている。

436本目