みやび

別離のみやびのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
4.6
本作は現代イランが抱える貧困や、家庭問題、宗教、男女の区別とその間の格差などと様々な社会問題要素を絡め合わせ、俳優陣の上質な演技と丁寧な脚本で、人間というものを浮き彫りにしている。

世界中のどんな人にでも当てはまる、普遍的なテーマを軸にしていることもあり、宗教や文化の違いはあまり気にならなないどころか共感できる部分の方が多かった。
現代社会の投影があることでドキュメンタリーぽくもあり、登場人物たちの嘘が次々と明らかになっていく様子にはサスペンス・ミステリー映画ぽさも感じる。

登場人物は基本、根はみんな善人。だからこそ自分の持つ「善」の感覚が人と違うと衝突が起きてしまうのだろう。
どんな人間にも善があるし悪もある。善と悪は表裏一体だ。ほんの少しのズレが積み重なり、こじれてしまう人間模様。

ラストシーン、答えはひとつに決まっていながらも全てを見せることなく映画は終了する。
具体的な答えを全て見せず観る側に咀嚼する時間を与える作りは映画として完璧だと言える。

本作は、「善」と「悪」という人間が合わせ持つものを上手く描き出している心理的ヒューマンドラマの傑作だった。

アカデミー賞やゴールデングローブ賞、ベルリン国際映画祭での複数受賞も納得の作品。
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