すご〜く簡単に言うと本作は、とある一家と家政婦の間に生じた"事故"を巡る法廷ものの作品だ。
食い違う証言、度重なる嘘。
全く先読みのできない怒涛の展開と抜群のテンポには目を見張るものがあり、ひと時たりとも映画から目を離すことができなくなってしまう。
全体的に非常にレベルの高い作品だが、特に優れているといえるのはその緻密かつ超リアルな人間描写だろう。
宗教や介護といったテーマを根底においてはいるが、つまるところ本作が描いているのは醜く脆い人間の本性だ。耐えがたいほどの罪と責任がのしかかった時、その事実を真に受け止めることのできる人間など1人もいない。そこから逃れようともがき、苦しみ、人を傷つけ、そして大切なものを失っていく。
誰一人として救われない結末に漂う虚無感に打ちのめされたが、それでも人間は逃げ続けるのだろう。
不条理極まりない現実の苦しみから•••。