ろくすそるす

狼は天使の匂いのろくすそるすのネタバレレビュー・内容・結末

狼は天使の匂い(1972年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

暗いフランス映画からサスペンスの金字塔『太陽がいっぱい』まで、実に幅広いジャンルを撮ったルネ・クレマンの本作は、ユーモアと哀愁の漂う男たちの『禁じられた遊び』であった。なるほど、男が沁みるフレンチ・フィルム・ノワールの大傑作である。男同士の友情、強盗一味の団欒と待ち受ける悲哀。男と女の人間ドラマ。伏線の回収に至るまで丁寧な作りが見られる。
 最初人質であった主人公が段々と仲間になっていくくだりの展開(何度も危機を免れる)や消防車の梯子を使った犯罪シーンなど、プロットが非常に練られていると感じさせられる。
 とかく堅くなりがちな男の世界、犯罪の世界に「不思議の国のアリス」をモティーフとして入れてくるあたりが、粋であると思う。盗賊一味が賭けをやったり、集合写真を撮ったりとユーモアな描写も多く、味のある演出も非常に冴えている。
 だが、なんと言っても私が一番魅力を感じたのが、白髪の強盗のリーダー・チャーリー役のロバート・ライアンの渋さが山崎努さんや晩年の菅原文太さんを思わせて、格好いいというところなのだ(主人公に昔の話を物語る様は、どことなく「私のグランパ」の時の文太さんを彷彿とさせる)。
 ラストの「ビー玉」のために戻る主人公のエピソードも心に残る。大好きな映画。