安堵霊タラコフスキー

ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

4.8
これまで以上に地獄の黙示録という映画が凄まじいものだったと理解できること請け合いのドキュメンタリー。

地獄の黙示録の撮影風景やコッポラ夫妻ら関係者の発言をメインとして構成されているから殆どメイキングみたいなものなのだけど、対象の映画がトラブルまみれの逝かれた作品だからめちゃくちゃ力のこもった規格外のメイキングになっていて、人物の発言が多い映画はそこまで好きじゃないのだけど圧倒的な撮影風景ばかりの間に挟まれば清涼剤のような働きを生んでいて非常に助かった。(まさに地獄の如きあの撮影模様ばかりずっと見ていたら凄さに放心状態となっていたろう)

コッポラ自身は自作を失敗作と断じていたけど、それならそれでこれ程神話的な失敗作なんて他にあり得ないだろうから、やはり偉大なことには変わりないはずだ。(そう思うのは自分が桁外れに頭のおかしい映画が大好きって嗜好の持ち主でもあるからだろうけど)

オーソン・ウェルズは同じ闇の奥を原作とした映画を作ろうとし、それが頓挫した結果市民ケーンを作ることとなったらしいが、一つの作品をきっかけに映画史に燦然と輝く傑作二つが生まれたというのはなんと運命的なことだろうか。

それにしても、ヘリがマジの任務に撮影途中に持って行かれたりマジもんの腹ペコの虎を撮影に使ったりと、大変だったことが見ているだけでよくわかるこの撮影風景に触れ、それでも映画を撮りたいと思える人間が真の映画人になり得るのだろう。(ちなみに自分は自主製作でシコシコ撮るのが限界)