こたつむり

ザ・クラフトのこたつむりのレビュー・感想・評価

ザ・クラフト(1996年製作の映画)
3.4
♪ くすんだ石だって
  輝いて生きていたいんだな
  はじめから輝かせてよ 
  神様センスがないのね

恋の呪文はスキトキメキトキス。
…と古くから言われるように青春とオカルトは切っても切れない関係。だから、その境界線に佇む映画が存在するのも当然でした。

本作もそんな物語。
「転校してきた主人公は、黒魔術に傾倒している三人組と出会った。最初は彼女たちを敬遠していたが、次第に距離感は縮み、主人公も立派な“魔女”となる…」という高揚感に満ちた展開は独特の魅力に満ちています。

また、青春映画で大切なのは人物の造形。
無明の海を泳ぐためには確固たる個性が欲しいのです。本作の場合で言えば“何かに縛られている”ことで、それを表現していました。

肌の色、身体の傷、家庭環境…。
自分たちの手で容易に振り払うことが出来ないそれらは“呪い”に等しく。彼女たちが黒魔術を選択する気持ちが十分に分かるのです。

また、黒魔術の描写も地に足が付いていました。後から知りましたが、本物の“魔女”による監修が入っているとか。だから、ミーハーな描写(イモリを煮えたぎる湯の中に入れる…とか)が無いのですね。魔術で大切な“系統”にも芯が通っているので説得力が違うのです。

ただ、正直なところ。
黒魔術方面に力を入れ過ぎた所為か、感情描写が疎かになっていたのも事実。例えば、三人組と仲良くなる展開も“心情に添う部分”が少ないので、唐突に感じました。他にも“伏線”を投げっぱなしにしている部分も多く、洗練されていると言えないのが残念。

まあ、そんなわけで。
登場人物たちと同じように“ぽっかり”と穴が空いた物語。共感を求めるのではなく、知的好奇心を満たすスタンスで臨んだほうが楽しめるかもしれません。また、『スクリーム』でブレイクする前のネーヴ・キャンベルが出演しているのも楽しみのひとつですね。
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