horahuki

ストレンジャーズ/戦慄の訪問者のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.4
プロポーズが失敗して気まずい雰囲気のまま別荘で過ごしてたカップルの元に、空気読まずに(しかも午前四時に)3人組が何度も何度もドアをノックしまくるホームインベージョンスリラー。

私の好きなモンスターホラー『ザ・モンスター』のブライアンベルティノの初監督作。ちなみにベルティノ監督はこれまた私の好きな『フェブラリィ』の製作総指揮も担当しています。『鮮血ピエロの惨劇』は見てないけど結構好きかもしれません、この監督。

事実に基づいた話だというテロップが最初に出てくるという良くある始まり方をする本作ですが、何か大きな事件というよりもベルティノ監督の幼少期の体験に基づいたお話のようです。その体験というのが、夜に見知らぬ人がドアを叩き、家にいない人の名前を呼び、去ったと思ったら近所の家が侵入されたというもの。それは怖い…。よく言われてるKeddie Resort Murdersとの関連性は監督が否定しているようです。

理不尽な暴力の犠牲となる人々を描いた今となっては良くある作品ですが、『メイクアップ』や『ファニーゲーム』のような強引かつ巧妙な話術によるものではなく、『屋敷女』のようにいつの間にか家にいて主人公の背後、カメラの隅の方にぼんやりと映っている。そして幽霊のような実体のなさでもって至る所に出現するという変わったスタイル。

いつの間にか背後にただ何もせずに立っていてカットを割ると消えているという本作の見せ方は、『ハロウィン』のマイケルマイヤーズに近い。姿を映すことで観客には既に侵入されていることを見せつつも、主人公たちには部屋の中の細かな異変の積み重ねにより侵入を確信させるというやり口も面白かったし、同じところを何度も繰り返すレコードやその後に唐突に訪れる無音、そして無音の中で近づいてくる足音という音による演出も丁寧で良かったです。

本作は、家の中に侵入し家主と侵入者との支配関係を逆転させるというホームインベージョンスリラーの常套からは外れており、「反撃、脱出、外部との連絡」の3つだけを禁じ、直接の危害を加えてくることもなく、まるでペットを放し飼いにするかのように侵入者に遊ばれ続ける。こういったひらけた場所を物理的にではなく、心理的な要素でもって密室へと仕立て上げるのは『ザ・モンスター』でも共通して見られた手法だし、緩急のつけ方含めてそちらの方が圧倒的にうまかったので、本作を経て進化したのでしょうね。

本作の場合はあんまり緩急つけるのが上手くなくて、間延びしちゃった印象。盛大なプロポーズが成功したのは良かったけどね。

ちなみに本作で「タマラはいますか?」って聞いてくる女の子、本作の数年後に『パイレーツ・オブ・カリビアン生命の泉』でタマラ役を演じているようです。まさかの自分を探してたんやね。見つかってよかったね!
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